Audit Topics
(Japanese only) 監査基準委員会報告書315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」の改正について
日本公認会計士協会より、2021年6月9日に監査基準委員会報告書315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」の改正が公表されました。
1.本報告書の概要
今回公表された報告書は、財務諸表の重要な虚偽表示リスクを識別し評価することに関する実務上の指針を提供する監査基準委員会報告書315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」を改正するものです。具体的には、2019年12月に国際監査・保証基準審議会から公表されたISA315(Revised2019)及び2020年11月に公表された監査基準の改訂に対応するため、同報告書を改正しています。
〈ISA315の改正〉
現行ISA315の適用には、実務のばらつきが存在する可能性やIT全般統制に関する指針が十分でない懸念という問題点が生じていました。また、監査監督機関よりリスク評価手続が適切に実施されていない旨の指摘があり、監査品質向上のために、リスク評価手続に関する監査の基準の改正が求められました。
〈監査基準の改訂〉
2020年11月11日に公表された、「監査基準の改訂に関する意見書」(企業会計審議会)において、リスク・アプローチの強化について、主に以下の改訂が行われました。
・基本的なリスク・アプローチの概念や考え方は現行の監査基準を踏襲しつつも、「固有リスクと統制リスクを分けて評価する」こととされた
・特別な検討を必要とするリスクについて、虚偽の表示が生じる可能性と当該虚偽の表示が生じた場合の金額的及び質的影響の双方を考慮して、固有リスクが最も高い領域に存在すると評価したリスクと再定義された
上述の通り、今回公表された本報告書はISA315の改正及び監査基準の改訂に対応するために改正されたものです。主な改正点は以下の通りです。
1.重要な虚偽表示リスクの識別と評価の強化、適用の一貫性の確保
(1)「固有リスク要因」等の新たな概念の導入
(2)リスク評価手続の明確化
(3)重要な取引種類、勘定残高又は注記事項の網羅性の検討
2.企業の内部統制システムの理解の一貫性の確保
(1)内部統制に関する用語の明瞭化(「内部統制」と「内部統制システム」)
(2)内部統制システムの5つの構成要素の理解の範囲の明確化
(3)IT関連①用語の定義②IT全般統制の識別と評価の流れ③IT全般統制の識別と評価
3.適用される財務報告の枠組みの理解
4.適用の柔軟性
5.職業的専門家としての懐疑心の強調
2.適用時期
2023年3月決算に係る財務諸表の監査及び2022年9月に終了する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から実施されます。
なお、本稿は本報告書の概要を記述したものであり、詳細については下記をご参照ください。
日本公認会計士協会